走り出す。

深夜2時、住宅街の公園の中、改造された車が三台入ってきた。
うち一台は知り合いが乗ってる。
僕は、急いで公園から家に帰ってパジャマから暖かそうな私服に着替え、バイクの鍵を手に取った。



公園の端にシートに覆われているバイクがある。この時代では古いバイクだ。
僕は公園の真ん中を通って歩いて行く。
車の知り合いは、僕をチラと見たが、僕が真っ直ぐバイクの方へ歩いて行くのを止めなかった。





シートを取ると、黒い古そうなバイクが寝ていた。鍵を入れて、目覚めさせた。
キックで一発でかけると、公園の中のいざこざが背景の一部になった。




僕は走り出した。
公園の人達の顔も判断出来ないくらい気分が高まってきた。
公園を出て、家の前を通って、僕は走った。時刻は2時30分。
道路にはほとんど車はいない。
僕は市街地から出て、山道に入り、発電所を抜けて車の間を縫うようにどんどん飛ばした。走っている車が止まって見える。
僕は、もっと速く、もっと速く、とスピードを上げていった。
エンジンはまだまだ元気そうだった。



「もっと速く」「もっと速く」と、ある時点で、周りの音が全く聞こえなくなった。
僕の呼吸とバイクの走る音しか聞こえない。僕は、それを走りながら喜んだ。気分は最高潮に達した。





いきなり雨の音が聞こえてきた。
僕は目が覚めた。